【書籍/映画レビュー】海賊と呼ばれた男を読んで観て

こんばんは、トヲルです。

ついに百田尚樹氏原作、「海賊と呼ばれた男」が上映されました(大分経過してる)。

タイトルに「読んで観て」とありますが、決して誤字ではございません。
書籍と映画、いずれも楽しむことが出来ましたため、その感想諸々を綴ってみたいと思います。

観ようか、読もうかと悩まれている方の参考になれば幸いです。

恐らく、ツルツルっとネタバレもしてしまうことが予測されますので予めご了承くださいませ。

海賊と呼ばれた男ってどんな話?

「海賊」というキーワードが含まれている関係上、何やらアクション系ですとか戦国時代のアレコレ等々イメージされる方がいらっしゃるかも知れませんが、ざっくり書いてしまいますと「一企業のサクセスストーリー」です。
サクセスストーリーのプロセスストーリー(?)がこれまた事細かに滾々と書かれているという…話を書くにあたり細かいあれやこれを説明しまくってしまう百田氏らしさ溢れた一冊となっております。

原作は上下作品となっておりまして、映画はその内容をかいつまんで展開。

作品のモデル

この作品は実際にあった話をフィクション化(?)したもののようです。
ウィキペディアがこちら

海賊とよばれた男 – Wikipedia

モデル企業は「出光興産」。
主人公、国岡鐵造のモデルは出光興産創業者の出光佐三氏です。

オススメは断然書籍版

この物語をサクっと楽しむには映画版がお手軽なのですが、ワタクシ個人としましては時間が許すなら上下構成の書籍版をお楽しみ頂くことをおすすめしたい。なぜかと言いますと、映画版はエンターテイメント性が強く確かに万人受けしそうな内容なのですが、完全なエンターテイメント化によって、作者である百田氏の訴えたいテーマがかなりぼやけてしまっているからです。

百田氏の文章は先程も申しましたとおり、かなり細部まで細かく説明するスタイルと言いますか…「永遠の0」でもそう感じたのですけれど、お陰で自分が良く知らない零戦や戦艦の機能や構造ですとか、戦時のパイロットの苦労ですとか色々なことを新たに知ることができました。「海賊と呼ばれた男」の書籍版もそういった文章スタイルに違わず、描写がかなり細かい分イメージがし易い造りではないかと思います。その時代のことを知らない世代であっても細かい描写を楽しみながらイメージを膨らませ、当時の世界を楽しむことができるかも知れません。妄想想像力って大事。

海賊と呼ばれた男
そのテーマとは

それは…小売業におけるポリシーと言いますか。
お国のために身を粉にして働け、大企業に巻かれるな、海外に負けるなとかそんなメッセージが幾度も入っているのですがー…

とにかく、商売というものはいくらで仕入れていくらで売って利益がどうこう、ではなく。

いかに適正な価格で
すべての消費者に
必要なものを届けるか

ということではないかと思います。

消費者のことを思って商売をする…
顧客を重んじる小売業の原理ですね。

最近は企業格差も大きく、小売店においては風当たりも厳しい日々が続いておりますし、大企業はそこはそれで数字ばかりに目が行き気味な印象で、こういった企業理念を持っているところは果たしてあるのだろうか?という疑問。

逆に、この企業理念に傾倒しすぎますとブラック企業化する恐れもございます。
或いは生産性を追求しすぎるとブラック企業化する…といったような。
やりがい搾取ですとか、そんな言葉も生まれてしまう時代。
ブラック企業というものは、往々にして労働者の良心につけ込み労働を美化するものですから。

何事も丁度よいバランスを保つことが重要なのです。

ただまあ、ひとつ言えることは優秀な人材が何にも代えがたい財産であって、それによって経営者は自分のポリシーを貫き通し、巨悪とも渡り合えることができるとかそういう雰囲気です(ざっくり)。

顧客に喜んで貰えれば利益はあとからついてくる、といった言葉も耳にしますね。
経営者になったことがございませんのでこれについてはノーコメントなのですけれど。

私自身も、

このような会社、本当にあるだろうのか?

…と身震い致しました(

この作品を読んで得られたこと

主に仕事などで悩んだ場合に、割りとどうにかなるかもしれないという、漠然とした安心感が得られます。
本当に生活に困ったら乞食でもしようかと語り合う、そういったくだりが。

また、誰かのために尽くすという姿は、何ものにも換え難く美しい姿です。
そういった意識が連帯感を生み、労働の楽しさを増し加えることができるのかも知れない…とも考えさせられました。

それにしても国岡商店はうまく行き過ぎではないかなどと思うわけですが、人に尊敬されるであろう信念や使命感があって、一切ブレない人には、優秀な人材や味方が集まるという…非現実にも近い希望(妄想)が抱けます(やや皮肉)。

映画版で気に入らないところ

映画ですので、やはりエンターテイメント性を重視した仕上がりとなっております。
何やらミュージカルのようなシーンですとか…

物語の進行に大切な石油タンクや製油所の建設までのくだり、また初代日章丸のことなど省略してしまったら勿体無い、というシーンがたくさんあります。
初代日章丸が不条理なことに戦争に持ち出され結果沈んでしまって誰よりも悲しいのは鐵造自身なのです…!

一番気に入らないのは前妻である国岡ユキの扱い。

書き置きのみを残し突如出ていった…のではなく、ちゃんと話し合って別れたのです(私の記憶が正しければw)。
前妻がどのような思いで別れを決意したのか、当時の女性の立場、役割ゆえの辛さを、もう少しだけ丁寧に描写して欲しかったと思ったりもいたしました。

「油、持ってきたけ!」

という掛け声は気に入っておりますが。

労働のキホンってなんだろう

それは、誰かを助け、誰かの役に立つ

これに尽きると思います。

人の役に立ったという気持ちと、その提供した何かの見返りとして生活の糧を得る。
これが、仕事の基本ではないのかなと思う訳です。

それをね、こっちは金払ってるんだから当然だろうという思考回路はもちろんのこと、自分はこれだけ優秀なのだから云々といった、両サイドにおいて傲慢さを持ち続けては、ビジネスやヒトの生活というものは成り立たないのではないかと。
お互いに感謝の気持ちを忘れず、与えられた役割を全うすることが大事なのでしょう。

それが、報酬を渡しているからといった具合で形式的な謝辞に収まり、労働を当然のものと捉えて心からの感謝の念を素直に伝えられない人のどれだけ多いことか……(これは愚痴)。

最近は、いくら稼ぎたい、ですとかいくら貰っている、ですとか。
そういった額面ばかりが注目されすぎていて、人の生活において何が一番重要なのかがボヤけてきた印象です。

人の生活の数だけ、満足のカタチがある。

私はそう思います。

いくら稼ごうが、どのような生活水準であろうが。

払うべきものを収め、食事が出来、季節に合わせて必要な衣類を揃える。
その上で、その人なりの「身の丈の生活」を心得て日々を充実したカタチで過ごせれば、それで十分だと思うのです。

ワタクシに「出来ているのか?」とは問わないでください(

なんとコミックスが出ておりました。